こんにちは!登場二回目、ウェイブ編集部のTです。
前回編集長が語った、漫画原案づくりについてより詳しく解説したいと思います!
▶前回の編集長の記事はこちら
記事を読んで、「原案書いてみたいな…」とワクワクしている方もいらっしゃるかもしれませんね。
それでは、ワードなりメモパッドなりを立ち上げて、まずは――
■書かない!
まだです。まだ書いちゃダメです。
じれったいと思いますが、一度立ち止まってください。
原案って、いわば「企画書」なんです。
どんな業界でも、「企画書を出そう!」と思ったときに何をするかと言えば、まずは市場分析ですよね?書く前に、「今流行している作品ってどんな作品だろう?」というチェックは欠かせません。
この作品の強みは?
ストーリー? キャラクター? 会話の面白さ? 絵の綺麗さ?
さまざまな角度から作品を分析していきます。
ウェイブ編集部では定期的に勉強会を実施しているので、自然と分析グセがつくはずです。
さて、市場分析をして、最新のトレンドもチェックしましたね!
それでは改めて、もうそろそろ――
■まだ書かない!!
まだダメです。まだまだまだダメです。
市場分析を終えましたが、もっと大事なことがあります。それは、お渡しする漫画家さんへのヒアリングです。
漫画家さんの得意なこと、興味のあること、逆に苦手なこともヒアリングしましょう。
原案は基本的に「当て書き」です。
漫画家さんと相性のよい原案をお渡しできれば筆が乗るでしょうし、相性のよくない原案になってしまったら、漫画家さんの力を引き出せないかもしれません。

分析やヒアリングをしっかりやっておけば、「○○のテーマが流行っているから、そこに漫画家さんの好きな△△の要素を足して、□□のネタにできるんじゃ?」というふうに、アイデアに結び付きやすくなります。
遠回りに見えますが、事前準備を行うのが実は一番の近道なのです。
■さらに近道するコツ
新人期間中は、練習として漫画家さんに渡す予定のない原案をつくることもあります。
そのときには、
「ヒット作の構造を抽出する」ということを意識してみてください。
例えば、
「同窓会で再会したかつての憧れのヒーローが僧侶になっていて、彼との恋愛は無理かと思うものの、僧侶らしからぬ積極さで求められてしまい…」というあらすじの作品があるじゃないですか。
ここから
【恋愛と遠そうな属性のヒーローが、意外にも積極的に求めて来る】という
構造を抽出します。
そしたらその構造に別の要素を乗せてみます。
「硬派で有名な番長(=恋愛と遠そうな属性のヒーロー)が、意外にも積極的に求めて来る」…とか。ちょっとイメージが湧いてきませんか?

わかりやすくキャラ属性の部分を変えましたが、別の要素を入れたり、
フック(読者が気になってしまうポイント)を付け替えたり、
違うジャンルに置き換えたり…などなど、
ヒット作の構造を分析することで、たくさんのアイデアを導き出すことができます。
■編集者は自分の原案なんか大事にするな
さて、一生懸命頭を悩ませて、なんとか原案が完成しました!
漫画家さんに原案をお渡しすると、
「実は自分も考えたネタがあって…」と、
より面白いネタを提案してもらいました。
さあ、どうしますか?
当然、面白いネタを優先します。
「サンクコストバイアス」
という言葉をご存知でしょうか。
ざっくり言うと、これまでにかけたリソースをもったいなく感じてしまって、
なかなか見切りをつけられない…という心理です。
時間をかけて考えた原案を切るということは誰でも「ウッ」となってしまうものですが、そのせいでより面白いネタを見逃すことがあってはなりません。

原案は一本一本大事につくらなければなりませんが、大事にするものではありません。一番重要なのは、漫画家さんに面白い漫画を描いてもらうことです。
「打たれ弱いし、自分には無理かもしれない……」と思った方、大丈夫です。
編集長を始め、諸先輩方もかつては死ぬほどボツを喰らってきたものです。私はそんな先輩方がボツを喰らいまくるのを見て、(こういう原案だとこういうところがボツなのか……)と勝手に参考にしまくってきました。
先輩の築いた膨大なボツの山という最高の資料があるので、後輩の方が圧倒的に成長しやすいんですボツの山をチェックするのは非常にオススメです。なんたって自分にダメージがありません!
かく言う私もその山を少なからず高くした一人ですが、(先輩たちもあれだけボツ出してきたしなあ)とわかっているので、心穏やかに受け止められるようになりました。
大変なこととして書きましたが、
原案を考えるのはとても楽しくてやりがいがあります。
「未経験でもあのとき思い切って応募してみてよかったな」と心から思います。
書くのを我慢してここまで読み切ってくださったあなた、
「さあ、今が書くときですよ。」